認知症一人暮らし終了の父と遠距離介護の私

頑張りすぎない、周りのプロに頼る、自分を大切に、を忘れないようにしながら認知症一人暮らし父(要介護2)を遠距離介護中です。父のことは好きだけれど、時々背負い投げしたい時もある。でもやっぱり好き!後で読み返して笑うために書き溜めています。

介護

娘で妻で妹で他人。

朝、父とアレクサでビデオ通話をした。ベッドに寝転がって新聞を読む父に、「お父さーん」と呼びかけると、画面に映った私の顔を見て驚き、次いで「おお~!」と嬉しそうに答えてくれる。ビデオ通話の開始は、大体いつもこんな感じだ。父は、毎度儀式のごと…

ぱっぱっぱーのぱー

先日、父は88歳になった。仕事の都合で誕生日ジャストにはなかなか会えないが、その近辺で帰省し父に直接おめでとうを言うのが、私の年間スケジュールの1つになっている。88歳、米寿である。帰省初日、もうすぐ夕方という時刻に家に着き、玄関の郵便受けに…

ビバビバノンノンビバノンノン

父は、風呂が嫌いだ。母が自宅にいた頃はしょっちゅう入浴をせっつかれていたのだが、その母が入院してからは「入らなくても死なない」論を掲げ、ケアマネさん、ヘルパーさん、私があれやこれや画策する風呂に入ろう作戦は、毎度無残に撃破されていた。入浴…

紙パンツ、さるのおやつ、ふりかけ、あるいは父の愛。

大変、大変お久しぶりです。お久しぶりの間に何があったか簡単に書きますと、今年1月、たまたま私の帰省中に父が転倒し、それ自体は擦り傷程度で済んだのですが、倒れたままなかなか起き上がれず固まってしまった父をえっちらおっちら抱き起しながら、『つい…

気がつけば年末、蝶番はひっそりとその役目を終えた。

日課である父へのモーニングコールをしたら、ちょうどヘルパーさんが来て下さって、朝ごはんを食べ終えたところだった。「電話鳴った途端にね、ヘルパーさんが「あっ娘さんだ」って言ったわ~」と、電話口から父の朗らかな声が聞こえ、今年をお互いの笑い声…

おめでとう狩り

先日、41歳の誕生日を迎えた。 出不精、趣味なし、非社交的。行動範囲も交友関係も非常に狭い私には、定番・突発含め、年間通しておよそイベントというものがない。ひとつ歳を取る度に、特に何のドラマも起こらぬまま平坦に過ぎ去った1年間をぼんやり振り返…

タンスの中の発酵ワンダーランド。

3月の帰省から4ヶ月後の、7月帰省時のことだ。 帰省初日に父のタンスを開けた途端、解放されし引き出しから飛び出して、私の鼻腔を颯爽と駆け上がってきたものがあった。瞬間、私の脳内で「あかん」ランプがパッパパッパと明滅する。 臭い。 ただただシンプ…

父とエアコンと私~賽の河原2021夏~

朝7時。今夏、実家のリビングに設置したスマートリモコンが、「室温26度以上でエアコンの冷房をオン」の信号を発したことを、スマホアプリにて確認。 朝8時。スマートリモコンの温度センサーで、実家の室温が27度を超えていることを確認し、父に電話。「お父…

時計たちのニルヴァーナ

父の寝室に、時計が3つ。全て、ベッドのすぐ横にある机の上に、眠る父を拝むような配置で、それぞれ少しずつ距離を空けながら横並びに置かれている。 デジタル時計もあればアナログ時計もある。そのうちのひとつは、小学生時代に私が愛用していたファンシー…

これはハンカチですか? はい、ハンカチです。

父と外出する際に、着替えや鞄、持ち物確認などの準備を、私は手伝わないことにしている。 認知症の父は、「鞄必要か?」「財布持ったか?」「保険証どこだ?」、「ハンカチ持ったか?」「財布あるか?」「鍵持ったか?」、「ハンカチどこだ?」「鞄提げてくか?」「財布にお…

エゾリス父、その後。

nasuka-kaigo.hatenablog.com お金の保管場所について、父がエゾリスと化したことは以前書いた通りだ。 そんなエゾリス父、「会計時に小銭を出す」ことが大分難しくなっており、買い物の度に財布に小銭が貯まっていく。そして、ある程度貯まると今度は財布から…

無限問答「今日は何日何曜日?」

「ところで、今日は何日の何曜日さ?」 父は、認知症になってから「日付曜日を娘に尋ねる」という無限スキルを手に入れた。無限スキルの発動頻度は、年を追うごとに加速している。答えた直後に、間髪を入れず全く同じ口調で「ところで…」と再び問うこともままあり…

回転寿司と千手観音

千手観音になりたい。父と回転寿司屋へ行く度に思う。 寿司好きの父は、私が帰省するといつも回転寿司ディナーを所望する。近所には、タッチパネルで注文するタイプの店と、紙に書いて手渡すタイプの店とがある。父は、寿司は好きだがネタにこだわりはなく、…

父はエゾリス

「冷蔵庫から発見されました」 ついにきた。独身の時は恐らく祖母、結婚後は母が家計管理をしていたため、父には資産管理の経験が(ほぼ)ない。生活費以外の部分では毎月お小遣い制で決まった金額を母から受け取っていた父は、一人で生活している今、自ら窓口…

おとうさんスイッチへの憧れと猛省。

おとうさんスイッチをご存じでしょうか。某テレビ番組の、あれ。お父さんを自分の思うように動かすボタンのついた装置。 例えば通院。認知症の薬や骨を強くする薬など、いくつか服薬しているものの、おかげさまで内臓的には健康体で本人もそれを自慢にしてい…

カップ麺への敗北と救済

シンクに置かれたカップ麺の空き容器により、私は己にかけていた「頑張って料理を作らねば」の呪縛から解き放たれた。 介護帰省中、朝6時に起床して、朝食と父用の昼食を作り、朝食後はゴミ捨て掃除洗濯などをこなし、出かける直前、食卓に昼食をセット。父に「…

父の熱愛と破局、そして。

年が明けてからの一週間で、実家のテレビが映らなくなり、水道管が三日連続で凍結し、それをいいことに風呂嫌いの父が風呂場の水道の元栓を閉め、高らかに「脱・風呂宣言」をしました。 ピンチをチャンスに変える男、父。 体はこまめに拭いているみたいだし、…

父と爪切り

父の足の爪は、厚くて硬い。 高齢者の爪は、厚く硬くなりやすいと聞いたことはあるが、それにしたってとんでもなく厚くて硬い。爪切りで切った時の音で表すなら、ンブワァッツィィィィィンンンンンン……ンン……ン(方々に散らかる余韻)だ。通常の爪切りだとそ…

父と私のお薬戦争

父よ、とても良いお返事です。しかし、残念ながらそれではだめなのです父よ。父よ。 認知症一人暮らしの父の服薬管理。遠距離介護をする中で、これがものすごく難しい。 父は、内臓含め身体的には頑強な家系なので種類的にはそこまでではないものの、それで…

朝8時、眼下にファラオ

朝8時、父はファラオだった。